SMAの見分け方
筋緊張低下、筋力低下や筋肉がやせ細る(筋萎縮)といったSMAの症状は、タイプによって大きく異なります。
ここでは、重症度の高いⅠ型SMAの身体的特徴を紹介し、SMAと似た症状のある疾患を解説します。
Ⅰ型SMAの身体的特徴
乳幼児期に発症するⅠ型は、成人してから発症するタイプに比べて症状の進行が早く、重症となるため 、早めの治療が必要です。
- ミルクの飲みが悪い、同じ時期に生まれた子と比べて成長が遅い、泣き声が弱い、おとなしい、唾液を飲み込めない
- フロッピーインファント※ が観察される
- マシュマロ様の筋のやわらかさ
- 咳が目立ち、呼吸が苦しそう
- 胎動が少なかった
- 舌に細かいふるえがみられる(舌の線維束性収縮)
- 息を吸うときに胸がくぼみ、息を吐くときにお腹がへこむ(シーソー呼吸)
SMA以外に筋緊張低下、筋力低下や
筋肉がやせ細る(筋萎縮)といった症状があらわれる病気神経原性 | 脊髄疾患 | ●SMA |
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末梢神経疾患 | ●Charcot-Marie-Tooth病 | |
筋原性 | 筋疾患 |
●糖原病Ⅱ型(ポンペ病) ●先天性ミオパチー ●先天性筋ジストロフィー ●先天性筋強直性ジストロフィー |
疾患 | 先天性ミオパチー | 筋ジストロフィー※1 | 筋型糖原病Ⅱ型 (ポンペ病) |
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先天性筋ジストロフィー (遺伝形式:常染色体優性・劣性)1) |
先天性筋強直性ジストロフィー (遺伝形式:常染色体優性)1) |
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頻度 |
●国内:正確な頻度不明 ●海外: 罹病率 |
●国内:有病率 |
●国内:有病率 |
●国内:有病率 ●発生頻度に民族差あり10) |
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原因 |
●病因は骨格筋タンパクの欠損や機能異常3) ●責任遺伝子が解明されてきている3) |
●骨格筋の機能維持に必要なタンパクの機能異常によって、筋骨格細胞の変性・壊死が引き起こされる1) ●近年、責任遺伝子が次々に明らかにされている1) |
●代謝酵素の欠損による、心筋へのグリコーゲン蓄積11) ●近年、酵素補充療法が可能になった11) |
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臨床 症状等 |
●主に乳児期に気付かれる運動発達の全体的な遅れ4) ●筋力・筋緊張低下3) ●顔面筋罹患(高口蓋)3) ●頸屈筋の選択的罹患3) ●易感染性(呼吸不全)3) ●血清CK値:正常 〜 軽度上昇3) 5) |
●進行性の筋力低下1) ●福山型筋ジストロフィーでは顔面筋罹患が特徴的7) |
●血清 CK値:上昇10) ●近位筋優位の筋力低下10) |
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●近位筋優位1) ●発症年齢1歳未満1) ●血清CK値:上昇8) |
●筋強直現象1) ●咀嚼嚥下筋・胸鎖乳突筋・四肢遠位筋優位1) ●母親でミオトニア※2がみられる場合がある7) ●血清CK値:正常 〜 軽度上昇 |
乳児型 ●哺乳力低下10) ●心肥大10) ●巨舌10) ●肝腫大10) |
遅発型 ●骨格筋障害10) ●起床時の頭痛10) ●鼻咽腔閉鎖不全10) |
※1 遺伝性。遺伝形式と臨床的特徴に基づく古典的分類での7病型のうち2病型を示した。1)
※2 Grip Myotonia(ギュッと握った後の手がなかなか開かない)やPercussion Myotonia(舌をハンマーでたたくと舌が収縮し続けてすぐに戻らない)がみられる場合がある
1)松村剛.: 小児科. 62(6), 724, 2018.
2)難病情報センター(先天性ミオパチー).(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4726)(2019年8月アクセス)
3)石山昭彦.: 小児科臨床. 66(増刊), 1403, 2013.
4)須藤章.: 小児科診療. 80(3), 295, 2017.
5)鈴木理恵ほか.: 小児内科. 48(12), 1961, 2016.
6)難病情報センター(筋ジストロフィー).(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4522)(2019年8月アクセス)
7)井田博幸.: 小児科診療. 70(増刊), 215, 2007.
8)木村重美.: 小児科診療. 77(増刊), 828, 2014.
9)齋藤加代子. 神経筋疾患. In: 内山聖監修ほか編. 標準小児科学. 医学書院. p.671-689, 2013.
10)小児慢性特定疾病情報センター(ポンペ病).(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_097/)(2019年8月アクセス)
11)山口清次.: 先天代謝異常. In: 内山聖監修ほか編. 標準小児科学. 医学書院. p.167-195, 2013.
筋緊張低下 |
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筋力低下なし |
筋力低下あり |
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中枢神経障害※ ●脳性麻痺(失調型) ●脳外傷 ●急性脳症 ●大脳白質変性症 その他 ●Down症候群 ●Prader-Willi症候群 ●Ehlers-Danlos症候群 神経原性 ●SMA ●Charcot-Marie-Tooth病 筋原性 ●福山型筋ジストロフィー ●先天性ミオパチー ●糖原病Ⅱ型(ポンペ病) ●ミトコンドリア病 ●先天性筋強直性ジストロフィー |
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※ 時期によって筋緊張の低下も亢進も認められる。 |